酒屋日記 

小川酒店@滋賀浜大津、京阪電車沿いの酒屋のつぶやき

曲亭の家

舅が滝沢馬琴の大変な家に嫁いだ路、家族みんなが不仲で、しかも皆病だらけで、苦難の看病の毎日。

腹をたて、めげそうになりながらも、自分がいないと回らないという事が生き甲斐に。そして 人に馴染み、煮物が今日は美味しく炊けたとか、今年は柿が豊作だったこととか そんな些細な日常に幸せを見出す。

 

両眼を失明した馬琴の代筆を頼まれ、あまりの厳しさに耐え切れず、鬱憤をはらすために飛び出した街中で、馬琴の著作を待ち焦がれる読者の声を耳にして、頬に涙を流す路。

衣食住に関わらない読物 絵画 詩歌 芝居 舞踊 音曲 をなぜ人は求めるのか。

生き甲斐だから。

丁度すんばらしい音楽を聴いたところやったので、何か深く納得しました。

 

西條奈加さんの文章はほんまに惹きこまれます。

 

偏屈などうしょうもない馬琴やけど、戯作者としては大天才&ものすごい執念の努力家。そんな馬琴の右腕の役を全うすることで、人生の大きな誇りを得た路さんに大きな拍手。ええ小説やった。

 

感動したところ

人の不幸は押しなべて帳尻が合う。不幸が多ければ幸いはより輝き、大過がなくば、己の幸運すら気づかずに過ぎる。

 

必要だけの会話は角が立つ。女はそれを本能で察し、笑や愚痴や噂にまぎらわせて互いの距離を縮める。

 

深いなあ。