酒屋日記 

小川酒店@滋賀浜大津、京阪電車沿いの酒屋のつぶやき

ヴォーリス建築 吉田邸

前回ヴォーリス建築めぐりをしたときも、ここの吉田邸は住んでおられるということで門も閉まっていて、概観さえも背伸びをして垣間見る程度でした。でもその後、皮細工を教えているおばちゃんがここでその教室を30年もしてるということを聞いて、今回門だけでも開けてもらえるようにお願いしました。そしたらなんとラッキー!中にまで入らせて頂き、色々お話も聞かせて頂く事ができました。案内してくださったのは、とても上品なご婦人。故吉田悦蔵(ヴォーリズの直弟子であり、ヴォーリズの右腕。)の奥様でした。


ヴォーリスの名言「初めに台所の設計をする。台所は我々の命の元になる食物を作る所だから」「台所と寝室があれば家。けれども、家とホームは違う。居間ができて初めてホームの資格がある。」 「住む人の人生を高める場でなければならない」「・・・・そして花入。特に花入は大事。・・・テーブルの上に花の切れるやうの時のないやうにしたい。」また趣味的なまでの台所へのこだわりや、ダイニングの照明位置への気配り、はては窓辺の花の置き方へのこだわり・・・・ささやかやけど愛らしい快適な住居論・・・理想の居場所論をお持ちのヴォーリス。まさに吉田さんの居間は、家族の写真があちらこちらに・・・・生花も飾られていて、暖かな空気が満ち溢れていました。さらに親交の深かった野口健蔵の絵が洋家具とも解けあって、素敵素敵。そんな空間におばちゃんの皮のクッションが時を経てやらこうやらこうなって、自然に溶け込んでいたのもまた感動でした。食卓は映画マデソン郡の橋みたいな居間でした。和室には欄間のかわりに船板がはめ込まれていたり、見事な書や俳画、ヴォーリス直筆の絵。茶室もふたつ・・・・私は詳しくはないのでようはわかりませんが、きっとこれだけで個展が開けるくらいの芸術の宝庫でした。

階段の段差がとても緩やかでここにも、ヴォーリスのやさしさを感じました。

重要無形文化財にもなっていて、さぞかし維持していくのは大変やとは思いましたがでも・・・・大事に大事に守り続けていってほしいおうちでした。これだけでもうお腹がいっぱいになるくらい。暖かなおもてなしをありがとうございました。おばちゃんもええ出会いをさせて頂いてありがとうな。