酒屋日記 

小川酒店@滋賀浜大津、京阪電車沿いの酒屋のつぶやき

小鹿田焼きの旅

福岡県と日田市との県境に近い集落・・・皿山で焼かれているのが小鹿田焼。ここは世襲制のため昔も今も10軒のみの増えも減りもしない一子相伝。この村人やった黒木さんと黒木さんが連れてきた小石原焼の陶工 柳瀬さんと、この土地を提供した坂本さん、そして娘さんしかやはらへんかったので新しく小袋さん・・・この4つの苗字しかこの村にはありませんのや。

なんとも牧歌的な景色・・・桐の花と山藤とシャガが見事に咲きみだれる中、バスでくねくねと揺られていくと、ようやっと集落が見えてきました。なんかタイムスリップしたような・・時間が止まったような感じ。そしてバスから降りると、陶土をついて砕く音が聞こえてきます。感動して写真を撮っていたら、あちらでもこちらでも・・・・・

この地では、集落周辺の山から土を取ってきて、その土を乾燥させた後、唐臼で2週間ほどかけて搗くのです。そして釉薬の原料である灰も自然の植物灰にこだわり、自家生産。そしてそれを、豊かな山の木を使って、すべて登り窯で焼き上げるのです。谷間を流れる川の水と山の土と木とで丹精込めて造られる小鹿田はまさに自給自足。

芸術家という風貌の方は見当たらず、ここのおじいちゃんやろか・・・・と思わせる素朴な人々がここの陶工でしたんや。そのことが返って器に、奇をてらわない・・・背伸びをしない静かな職人芸の味わいを感じさせます。自分の住んでいるところのものを生かして、淡々と脈々と受け継がれてきたんやなあ。そんなことが垣間見える作業風景。

10軒の窯元はどれもこれも甲乙つけがたく、2度とくることはないと思うのでほんまに迷いました。せっかくならここならではのものを・・とも思います・・・・そしてお客さんの顔を思い浮かべながら、私なりに選んでまいりました。大皿もほしかったんやけど、なんせ重い!ので断念。

器も選ばなあかんのですが、とにかくこのシシオドシの音が気持ちようて、ずっとずっと聞いていたい心持がしておりました。残したい日本の音風景10選にもなっているそうです。