酒屋日記 

小川酒店@滋賀浜大津、京阪電車沿いの酒屋のつぶやき

亀の尾

続藤井君編。お百姓さんでもある藤井君 亀の尾を語ってくれはりました。これをきっかけに私もこのお米を調べてみましたんや。ほうっと驚くことが仰山ありました。

亀亀覇 純米大吟醸のお米亀の尾も、今滋賀で話題の渡船と同じく元飯米。そして、冷害にくるしむ山形の土地にあった、耐寒性に優れたお米をと阿部亀治さんという人が、努力に努力を重ねられ、山形の誇るお米になったというこれもものすごいドラマテイックなお米なのでした。亀治さんは自らは「亀ノ尾」を商いの道具にはせず、種籾を求める人には無償で分け与えはったそうです。(嫁さんには怒られてはったようですが)現代の美味しいお米の系譜をさかのぼると、必ず亀ノ尾にたどり着くそうで、コシヒカリササニシキの祖先でもあります。

ところが、有機肥料には向いていたこのお米も無機肥料の登場により、また害虫に弱く倒伏しやすい事も一因して姿を消しつつあった時に、夏子の酒で一躍有名になったように幻の味の復活に挑戦する蔵元さんが現れたのでした。なんか渡船にだぶります。

藤井君言わはるに、この亀亀覇 うすにごりは燗幅も広く燗あがりするのに、うすにごりで無いお酒はピンポイントの難しい燗になるそう。不思議やな・・・・またこのお米はにがが出やすいので、よほどの技術がないとええお酒になり難いので、滋賀県でも琵琶の長寿さんと不老泉の2社、全国でもたったの33社しか亀の尾のお酒を造っている所は無いのです。栽培にも大変手間がかかり、どうしても高価になるので上原さんとこでも14年度から造ってはりません。が、おそらく今年久しぶりの亀亀覇が仕込まれる予定やそうです。

冷やで香りが立つ端麗な生酒ではなく、米の旨みが凝縮した複雑な味わいが魅力のお酒・・ですが、亀亀覇は4合瓶2670円という高価なお酒なので、普段口にすることはできません。なので、初呑みきりのときにぜひじっくり味わいたいです。そして背後にあるドラマを思い浮かべつつ、渡船と飲み比べるのもまたおつなものかもしれません。