酒屋日記 

小川酒店@滋賀浜大津、京阪電車沿いの酒屋のつぶやき

やきものの真髄

上神焼 上神山窯元にうかがう。

ここは辰砂専門の窯。先代まではずっと薪で焼いていたけれど時代の流れで灯油に変えた。そしたら、この赤がなんとしても出ない!

3年間悩みあえぎ・・・ようやっとこの色が出せるようになった。苦しかったあの頃は、赤色なんか見たくも無いくらいにつらかった。

しかもこの色は安定が悪く、やっと素晴らしい色がでてもダレが出やすいのも特徴で欠陥商品の出る確率が恐ろしく高い。だから陶芸家は辰砂をする人が本当に少ない。

そんな中でようがんばらはった。白髪のお髭がほんまに仙人のようなお方。

美しいこの赤の影にはそんな血と汗と涙があるんやなあ。
でもこの赤・・本当に素晴らしい。綺麗や・・・



御一緒したやきものの師匠いわく、奇をてらった器は最初は良いと思って買い求めるけれど、使っていくうちに化けの皮がはがれくる。まるでお酒でいうと燗みたいに・・・・(ついつい器とお酒を重ね合わせてしまう)で、ほんまもんの器は使うほどにしみじみと魅力を増して、燻し銀のように光ってくるんやて。

きっとこのお皿は、光ってくるで。

で、プロの器屋は使う前にそれを見極める力をもってはる。プロの酒屋は新酒のときに良い熟成をするかどうか利き分ける力を持ってはる。

一方、お皿だけが自己主張してもそれは良い器とは言えず、料理を盛ってこそ完成される・・・お皿はあくまで料理を引き立てる謙虚さを持ち合せていることもまた大事・・・とも言わはる。
これまたお酒も一緒や。はあ・・プロへの道は険しいけど、楽しい・・苦楽しいという言葉を河合隼雄先生もいうてはったな。