酒屋日記 

小川酒店@滋賀浜大津、京阪電車沿いの酒屋のつぶやき

喜楽長さんへ

さて3月の蔵見学シリーズ最終章。喜楽長さんへいってまいりました。

ひとつ違いで、兄弟のように仲のよい、喜多社長と天保さんより後を引き継いで2年目を迎えた家杜氏さんにじっくりお会いできて、素敵な時間でした。

私が知りたかった辛口14度の純米吟醸。これは酵母は14号です。今私の存じている蔵元さんでは14号から9号に移行されているところがとても多いのですが、ここはあえて14号。私のうけとりかたが間違っていたらすみませんが、それだけ上手にお酒を醸すことが難しい酵母なのやそうです。しかも日本酒度を14度にするということは、某蔵元さんが聞いて飲んで計って絶賛してはったのを覚えていますが、それは身を持って感じてはったのでしょう。神業やとも。出品酒も明利(香りの立つ酵母)と14号を迷っておられましたが、ほとんど明利系が多い出品酒の中にあって、あえて14号で出したい!という想いをお持ちでした。これは私の自己満足ですよ・・・と笑ってはりましたが、喜楽長のお酒のラインナップの中で、杜氏さんが遊べる・・・というか技術力量を大きく発揮できる楽しいお酒がこのお酒やったのです。しかもこの旨み・・・これはてっきりアミノ酸から来る旨みと思っていたのに、違いました。アミノ酸度は低く、酸から来る旨みやったのです。これもふううう~んとうなずきました。

今年小川酒店でブレイクした喜楽長濁りもしかり。旨み甘味があるのにすぱっと切れてしかも廉価。これも家さんが、敢えて一タンク濁り用として造らせて貰ったというお酒でした。

お酒は蔵元が作るもの。蔵元が望むお酒をきっちりと作るのが杜氏の役目という確固たるポリシーをお持ちでありながらも、上の2本は家さんの想いがとりわけ詰まったお酒だったのです。

きっと止め処ない会話の中で生まれたこのお酒は、喜多社長と家杜氏の信頼関係があったからこそ生まれたお酒。上原酒造のおやっさんもよく遊ばはりますが、その中で生まれたクレオパトラのわすれものや再醗酵は偉大なお酒となリました。杜氏さんが遊べる蔵は素敵やと思いました。

もうひとつはアル添(素晴しい技術やのにこの言葉が響きが悪くなんとかしたなと言いつつ)。麹四段をかけたあと、完全に醗酵させてから必要最低限のアルコールを、絶妙のタイミングで添加するということでした。これが1日でも早かったりすると味質が変わってきます。その辺を語らはるときも表情はまさに真剣。私の大好きな普通酒をこないにも熱く熱く語る家さんを見て、小川酒店に並んでいるあの喜楽長の普通酒が誇らしげに思えました。

言いたい事はいっぱいあったのですが、おけいはんはいろいろここの造りにも参加され、ここだけの話を小耳に・・というか大耳に挟んでいただけに、今回感慨深いものがありました。
普通酒のもろみ。めっちゃめっちゃ元気!

今回も不思議なおもろいメンバー5人。その人たちも個性豊かで、大雨の中でしたがとても魅力的な蔵見学でした。お忙しいところ、丁寧に対応してくださりありがとうございました。
美しい室。綺麗に掃除されている所でした。
さすが喜多酒造。遊んでいるタンクが少ない!!